『任務の終わり』読了。

ビル・ホッジストリロジー(三部作)最終巻です。

ちなみに第1作に関するブログ記事「ミスター・メルセデス 読了」をアップしたのが2016年11月。キング初のミステリー小説だが、ぐいぐい読書に引き込まれたことが書かれています。


そして第2作が「ファインダーズ・キーパーズ」。ブログ記事をアップしたのは2018年5月。ちょうど1年前ですね。エントリー内で勝手に期待していましたが、翻訳の白石朗氏におかれましては今回も素晴らしい翻訳で(原書と比べたわけではないのですが 汗)、一連のビル・ホッジズシリーズの読みやすさと翻訳の素晴らしさによりハラハラしたりにくったらしく感じたり感情の起伏を抑え込みながら読み進めることが出来ました。


例によって「どんな物語か知らない人」向けに、本書にある内容紹介文を転記しておきます。


≪上巻≫相棒のホリーとともに探偵社を営むホッジズのもとに現役時代にコンビを組んでいたハントリー刑事から現場にきてほしいと連絡が入った。事件は無理心中。6年前に起きた暴走車による大量殺傷事件で重篤な後遺症を負った娘を、母親が殺害後に自殺したものとみられた。だがホッジズとホリーは現場に違和感を感じ、少し前にも6年前の事件の生存者が心中していたことを突き止める。これは単なる偶然なのか?
一方、6年前の事件の犯人、ブレイディは脳神経科クリニックに入院していた。大規模な爆破事件を起こそうとして直前で阻止されたブレイディは、その際に脳に重傷を負い、後遺症で意思疎通も困難な状態にあった。だが、その周囲で怪事が頻々と発生する。看護師、師長、主治医・・・・・彼らに何が起きているのか?エドガー賞受賞の傑作『ミスター・メルセデス』でホッジズと死闘を演じた”メルセデス・キラー”が静かに動き出す。恐怖の帝王がミステリーに挑んだ三部作完結編、得体の知れぬ悪意が不気味な胎動をはじめる前半戦がここに開始される!
≪下巻≫
メルセデス・キラーが何かを画策している。だが病室を出ることもできない彼に、いったい何ができるというのか?主治医や病院職員らの奇怪な行動の目的は?何の確証も得られぬまま、謎の連続自殺事件の調査を開始した退職刑事ホッジズとホリーだったが、ついに彼らの愛する者の身にまで、死の触手は伸びてくる。唯一の手がかりは携帯ゲーム機<ザピット>。単純なゲームがいくつもインストールされた、すでに製造中止となったマシンが、連続する事件の現場で見つかっていた。素朴な音楽とともに色とりどりの魚たちが泳ぐ他愛ないゲームに、いったいどんな忌まわしい秘密が隠されているのか?一歩一歩、惨劇を実行する計画を進めるメルセデス・キラー。一歩一歩、真相へ迫るホッジズと仲間たち。ついに<恐怖の帝王>が封印を解き、ミステリーとホラーが渾然となったサスペンスが沸騰する!キングにしか書けない最強のミステリー、完結。


と、まあ、差し障りはないけど興味を引くウマイ紹介文です。

103的にはもうちょっと「痒いトコロ」について感じたことを残しておきたいと思います。


【今回の小道具は携帯ゲーム機か!】

物語序盤からクライマックスのホッジズと中身ブレイディとの対決(?)まで関わってくる携帯ゲーム機「ザピット」。日本で言えばさしずめ任天堂のDSやSONYのPSVITAといったところでしょうか。

いや、違うな。

ザピットはもっとシンプルなゲームをいくつもインストールしてある、昔ながらのゲーム機のイメージ。現在のゲームより数世代古いもののイメージ。しかし!wi-fi通信機能付きですよ。

自分の手元にあったらとっても怖い存在だけど、ま、架空のゲーム機でしょ?

【その携帯ゲーム機のオソロしさ】

さて、本作では”自殺のプリンス”ブレイディがザピットを6年前のコンサート会場で殺しそこなった観客(主に若者)に送り付けて(あるいは”Z”を使って直接手渡して)、対象者を自殺に追い込むという筋書き。

ここでワタクシはめちゃくちゃ後味の悪いキングの小説『セル』を思い出しましたよ。

『セル』では携帯電話が発する電波(かなにか)によって人間がゾンビ化する(いや、実際には死んでないからゾンビじゃないや。狂暴化だな)というもの。

本作でもザピットによって人間がコントロールされていくという恐ろしさが語られているのです。


【ホリーの愛するべきキャラクター】

ミスター・メルセデスを読んだ時から感じていることだが、ホリーの愛らしさよ。

今でこそ様々な障害に対して社会が寛容になっていると感じるのですが(しかし、うわべだけかも・・・)、ひと昔前だったらなかなかホリーのような性格の人間が社会で活躍するのは難しかったのではないかと思う。

彼女の場合はホッジスやジェロームという理解者が居るから活躍できるのだが、事実、彼女を責めるばかりの家族と一緒にいたころのホリーは委縮して何もできない存在位だった。

そんな彼女に自信を持たせ、居場所を与え、仕事のパートナーとして信頼していたビル・ホッジスはホリーにとって特別な存在で(男女の愛情とは異なる)あった。


【あっさり死んでしまう主人公】

いや、あっさりではない。

事件を解決したのち、だ。

死因も自殺に追い込まれたのでも事故死でもない。病気だ。

ただ、前項で述べたようにホリーにとって特別なビル・ホッジズがいなくなったときに彼女は生きていけるのだろうか。答えは物語のラストにあるが、やはりビル・ホッジズのもとに吸い寄せられたジェロームがこれからの彼女の支えになるのだな、と。

もちろんビルの思い出とともに。


【三部作のうち最初の作品はミステリーだったはずなのに、本作はどうなのよ?】

もちろん主人公は同じだし、背景にあるのはメルセデスによる大量殺戮事件。

「ミスター・メルセデス」ではネットによる犯人とのやり取りや車を盗む際のテクニックなど、オーソドックスなミステリー小説の要素が満載だった。

第2作の「ファインダーズ・キーパーズ」は有名小説家の未発表原稿をめぐる攻防。ここにはブレイディはほとんど登場しないが、あれ?小説をネタにするストーリー、まるでキングのお家芸じゃねえの?うーん、ミステリーと言えば言えるけど、コレ、いつものキング節(笑)

そして本作。

もうキング初期のころの得意技。つまりスーパーナチュラル要素満載!

テレキネシスやテレポーテーションは登場しませんが(キングの初期作品にはたくさんあったよね。それももっともらしく語るんだ、これが。)、「精神を他の人間の意識に移し肉体をコントロールするだけでなく、意識を飛ばして自殺者大量製造元になる」なんてのは、大好きなネタですよ。


ま、ミステリーから逸脱してももちろんオハナシの面白さを阻害するものではないんですよ。

あ~面白かった♪

2輪、SK、ノイズ

2輪は自転車。SKはスティーブンキング。ノイズは音楽。 思ったことを素直に書いていきます。

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