映画『ドクター・スリープ』を観ました。まるでマジック。あの駄作と原作を繋ぐのはこの作品だ!


まず、いきなり駄作呼ばわりしたのがスタンリー・キューブリック監督による「シャイニング」であることを告白してしまおう。


と書くと、映画「シャイニング」やキューブリック監督を侮辱しているようにも聞こえるが、そうではない。キング自身も言及しているように、映画シャイニングは原作とは似ても似つかない結末であり、テーマそのものを見誤っているといっても過言ではない。昔からのキングファンであれば理解できる話だ。原作と異なる観点で製作された映像という意味であえて駄作と呼ばせていただいた。(キング作品愛が強すぎるため)


映画そのものの出来が悪かったわけではない。
美しいホテルで起きる惨劇やジャック・トランスが狂気に落ちていく描写は悪くないのだが、なんせ「シャイニング」の言葉の意味を全くはき違えた表現であることは否めない。

ま、本件については拙ブログで再三取り上げてきたので、もういっか。
しかし、本作『ドクタースリープ』は映画シャイニングと原作シャイニングと原作ドクタースリープを見事にリンクさせて、納得のいくプロットで語ってくれた。これはマイク・フラナガン監督の手腕によるところが大きい。聞けばマイクは子供のころからのキング作品ファンであり、だからこそ原作と映画シャイニングを繋ぎ合わせることが出来たのだろう。

キングは最初、マイクの脚本を見て納得し映画化を望んだらしいし、出来上がった作品を見ても絶賛している。マイク自身はキング作品のファンであると同時にキューブリック監督によるシャイニングの良さも素直に認めていて、それらを融合させることに見事に成功している。それが良くわかる予告編が以下。



さて、鑑賞した作品を語るのにネタバレなしで・・・というのは厳しいし、本作は特に「ネタバレ」自身が監督のキング愛であるので、書かないわけにはいかない。ネタバレ嫌いな人はスルーしてください。

【登場人物およびキャスティングについて】

*ダニー・トランス:心の奥底に深い影を持つ、父親のようなアルコール中毒によるダメ男、シャイニングという能力を封印しながら生きていく・・・などの背景を持たせた配役ということでユアン・マクレガーの起用は正解。特に、昔の恐ろしい記憶(とアノ箱)を封印したい部分とアブラを助けるために「シャイニング」を解放させる葛藤を見事に演じていると思う。


*アブラ:原作でのアブラの魅力は絶対だ。映画では2割ほど表現されていただろうか。もちろんヤツラに立ち向かう気丈さは持ち合わせているし、幼少期に無邪気に能力を使う可愛らしさはうまく表現していた。しかし、映画という限られたワクでは、ま、仕方ない。小説よりもディテールをいちいち説明するのには映画は向いていないのだから仕方がない。演じたのはカイリー・カランという役者さん。これをステップにさらに高みを目指してほしいですね。ただ、白目演技はほどほどに(笑)。


*ローズ:美しくも憎らしいローズを演じたのがレベッカ・ファーガソン。トゥルーノットのメンバーが得意な能力の持ち主であることを描き切るのは難しいかもしれないが、少なくともローズのスペシャルな感じはよく表していたと思う。


*ディック・ハローラン:今回ディックを演じたのはカール・ランブリー。映画を最後までみれば既に彼はこの世にいないのだろうと確信できるが(というか、確かシャイニングで死んじゃったんじゃなかったっけ?)、やはり人間的に魅力的な彼の顔を見ることが出きるのは(違う役者であっても)嬉しい。


*シャイニング時代の映像を多用しない:キング作品によくあるように(例えば「IT」のように27年後に邂逅する子供たち)昔と今がリンクして、あるいは解き明かされながらストーリー進行していくが、シャイニング時代の映像(あるいは当時の登場人物)をわざわざ撮りなおしていること。シャイニングのストーリー直後にダニーと母親がフロリダで生活する描写は全く違う役者が演じているし(それでも似ている役者ですよ)、ジャック・トランスがオーバールックホテルで息子と対峙する時にも役者が異なる。ま、同じ役者が演じたとしても時間というエフェクトにより「本人」認定されるかどうかも疑わしいしね。唯一旧シャイニングの映像を使ったのはジャックがウェンディを斧で襲う場面のほんの一瞬だけだった。徹底してるね。
で、そこにはとても好感が持てた。いわゆる映画シャイニングの2番煎じではなく「ちゃんと独立した映画として製作してるんですよ」という監督のこだわりが感じられる。


*ボイラーのくだり:ここはかなり重要なシーンですよ。それもダニーがオーバールックホテルに着いた時に真っ先に向かったのがボイラー室。思わずニヤっとしちゃいました。そうです。映画シャイニングのラストシーンが「冷たい」終わり方だったのに対して、原作は「熱い」ラストシーンだったのです。当然「炎」には全てを浄化する作用があるわけですから、アブラがダニーのように悪霊に悩ませられて脳内封印ボックスを置く必要もなくなることでしょう。

*ラストシーンでのアブラとダニーの会話。やはり締めくくりは「SHINE ON」なんですね ♪まるでRIOT(V)のDonのセリフのようですね (そこか!?)
え~い、大サービスだ!画像もつけちゃう!(笑)


最期に、キングも絶賛・マイク・フラナガン監督も自信を持っているように、本来のシャイニングの意味を正しく表現し、ドクタースリープも魅力的に表現し、かつ原作にも忠実に作ってくれたことに感謝!
これでやっとシャイニングも成仏できるってモンです(いろんな意味で)♪

0コメント

  • 1000 / 1000